市から帯状疱疹ワクチンの案内が来て価格が安いものと高いものが選べるため迷っている方もおられるかと思います。ここに院長の私見を述べますのでよかったらご一読下さい。
先に結論だけ申し上げると高い方のワクチンをおすすめします。
まず今回補助が出るきっかけは2017年にアメリカで新型の帯状疱疹ワクチンが発売されたことです。この新型の帯状疱疹ワクチンは帯状疱疹という高齢者に多く表れ痛みを生涯引き起こす大変困った病気をこれまで予防し得なかった95%以上防ぐという極めて画期的なワクチンでした。自分も祖父が帯状疱疹に苦しんでいたため待望の新薬と大変よろこばしく思っていました。アメリカで需要が高かったため本邦で認可されたのは2020年です。当院では2021年に取り扱いを開始しました。(詳しくは2021年10月の当院ブログをご覧ください。)その後自費で4万円かけて接種なさる方が徐々に増え当院でも接種を行ってきました。その後このワクチンの有効性が認知されてきたため東京や神奈川の一部で徐々に1万円を2回で計2万円などの助成がでるようになってきました。実は海老名市は神奈川で一番に助成を開始しています。とても適切な判断だと思います。新型のワクチンは10年以上たっても80%程度の効果が持続することがわかっています。(15年以上のデータはまだありませんがそのあたりで追加接種を行う必要はあるかもしれません。)アジュバンドといって局所の免疫増強を高める成分はコロナワクチンと同じものと思われ、筋注、注射後の発熱を起こす方がおられます。コロナワクチンで発熱した方は解熱剤を準備しても良いかもしれません。
このアメリカ製のワクチン補助に対し元からある国内製造のワクチンも一緒に補助しようというのがもう一つの選択肢になります。安い方の『水痘生ワクチン』発売日は1987年です。このワクチンは『みずぼうそう』の予防に使われます。このワクチンが帯状疱疹の予防効果が50-60%程度あることがわかっています。しかし今日まで積極的に勧められることはありませんでした。私も当クリニックで過去に接種をしたことがありませんでした。その理由は①正確なデータはないものの、類似ワクチンでの8年後の予防効果は4%まで下がっている事➁予防が目的であるため効果が100%に近くないと体感できないこと(せっかく打ったのに発症してしまったら後悔するかもしれない)③帯状疱疹は発症後速やかに治療にあたれば抗ウイルス薬で治癒が望める病態④以前は抗ウイルス薬が1万円程度と高価だったものの特許が切れ1500円程度まで薬価が下がっている事
以上のことから中途半端に安いワクチンをうっても発症してしまう後悔なら、打たなくても良いのではないかというのが院長の持論です。もちろん帯状疱疹自体は怖い病気ですので私の両親もすでに高い方のワクチンを接種済ですし、対象の患者さんには強くお勧めいたします。
ワクチンを必ずしもうたなくても水ぶくれを伴う痛痒い赤い小さなぶつぶつを見つけたら速やかに皮膚科で治療を受ければほとんどの場合はことなきを得ますので、ワクチンを打たずにそういった対応で判断するという選択肢もあると思います。この場合早めの判断が重要ですが、この判断がやや難しいという問題はあります。